ジェンダー論レポート課題

前期に担当した全学向けリレー講義「現代社会とジェンダー」の講義では、講義担当者5人がそれぞれレポート課題を出し、受講生はそのなかからひとつ選んでレポートを提出します。私の出した課題は次のようなものです。(→講義日記はこちらこちらこちら)。

自然な会話を5分間録音し(録音許可を得ること)、再生しながら書き起こしてみてください。そのなかに、性別が特定されるような言葉づかいは表れているでしょうか。論じてください。長さは1000字〜2500字程度、ただし、会話の書き起こしテキストを別に添えること(固有名詞など、プライバシーにかかわる部分は伏せ字にして)

結構面倒な作業でもあるので、選ぶ人は多くないかもしれない思っていたのですが、この課題を選んでレポートを書いたひとが20名ありました。(レポート提出者は約170名)。

録音許可を得ることと指示してあったため、「観察者のパラドックス」(観察対象は、観察者を意識することによって行動―この場合は言葉遣いなど―が変わってしまい、自然な観察ができなくなる)が出ている例もあるようでしたが、全体的に、力作レポートがそろっており、とてもおもしろく読ませてもらいました。

知らなかったことをいろいろと学びました。たとえばオタク文化における「俺の嫁」という表現が、男性話者がひいきの女性キャラクターを指して使うという状況から始っているものの、女性話者が用いる例や、男性キャラクターについて用いる例、また、話者とキャラクターが同性である例などについての分析は、これまで知らなかったのでとても興味ぶかかった。なるほどー。「俺」については、授業で男性一人称代名詞の話をしたので、その関連としてもおもしろいー。

レポートは、ほとんどの人が関西弁の会話分析でしたが、これを読みながら、わたし自身の傾向として、関西弁で書いてあると、何か「おもしろいこと」が書いてあるような気がして、笑いを先取りするように読んでしまうところがあるのに気がつき、そういう自分に失笑しました。そういう、おもしろいことを関西弁に割り当てるような地域方言の役割意識には反感を持っているはずなのにー。まあ、実際、学生さん同士の軽妙な会話が多かったこともあるのですが。


ところで、ジェンダーと言語研究といえば、国際学会、「国際ジェンダー言語学Sixth International Gender and Language Conference , IGALA6)」が、来月9月18日から20日まで、津田塾大学で開かれます。貴重な機会なので、なんとか聴講に行きたいです(→IGALA6のサイトはこちら