Correcting Cockneys

現代英語談話会の例会に出席。出席者10数人のこじんまりした集まりですが、3カ月に一度、研究会仲間の顔を見ると、気持ちがしゃんとします。

研究会の論集『現代英語談話会論集』第6号が出ました。

井口淳 Serve + O + (with) + NPの型 ―withの出没を中心に―
齋藤裕紀恵 Presentation of Refusals and Contexts in ELT Textbooks
田淵博文  Roald Dahl's Fantastic Mr Fox ―The Official Screenplayにおける'cuss'の用法について
山口美知代 Correcting Cockneys: Charles Morley's Studies in Board Schools
山本晃司  現代アメリカ英語における"awesome"の用法 ―口語における"awesome"の語義を中心に―

私の論文は、1897年にロンドンで出版されたジャーナリスト、チャールズ・モーリー(Charles Morley)のスケッチ集Studies in Board Schools(『公立学校素描』)のなかで、コックニー英語の使用およびその「矯正」がどのように記述されているかを論じたものです。このスケッチについては、以前、『識字と読書―リテラシーの比較社会史』(松塚俊三・八鍬友宏編、昭和堂、2010年)の第10章「読み書き教育効率化と標準発音普及を目指して―19世紀後半の綴り字改革論―)のなかで簡単に言及しました。そのときは、綴り字改革運動との関連で触れたのですが、今回は、スケッチ集全体を分析対象とし、1890年代のロンドンの公立小学校(board schools)で、標準英語の発音教育がどのように行われていたか、コックニー訛りがどのように直されていたかを分析したものです。

著者のモーリーは、チャールズ・ディケンズの愛読者で、『公立学校素描』所収の21のスケッチにも、ディケンズの影響が色濃く表れています(→というところは今回の論点ではないのですが)。またこれらのスケッチは最初、ディケンズが1846年に創刊した朝刊紙The Daily Newsに掲載されたものでした。モーリーは1890年代にその記者を務めていたのです。

識字と読書―リテラシーの比較社会史 (叢書・比較教育社会史)

識字と読書―リテラシーの比較社会史 (叢書・比較教育社会史)