『イギリス文化史』

イギリス文化史』(井野瀬久美惠編、昭和堂)の充実した目次を見ながら、今年もあと二カ月を切ったとカウントダウンモードに入らずに、よれぎみになっている体勢を立て直して仕事をしようと思っています。。

第1部 制度と文化  
  第1章 宗教と文化―変化する信仰と近世イングランド 那須
  第2章 政治と文化―伝統と革新の18世紀 長谷川貴彦
  第3章 労働と文化―「平凡な日常」とアイデンティティ 竹内敬子
  第4章 福祉と文化―チャールズ・ディケンズの世界 高田実
  第5章 教育と文化―連合王国の教育文化史 松塚俊三
第2部 「イギリスらしさ」を読み解く  
  第6章 イギリス料理はなぜまずいのか? 小野塚知二
  第7章 イギリス人はなぜ傘をささないのか? 谷田博幸 
  第8章 なぜイギリス人はサヴォイ・オペラが好きなのか? 金山亮太
  第9章 「われわれ」の山はどこにある―ウェールズからの問い
  第10章 「われわれ」の居場所はどこにある?―女たちのイギリス 梅垣千尋
第3部 「悩めるイギリス」の文化的起源  
  第11章 総力戦という経験―第一次世界大戦と徴兵制 小関隆
  第12章 第一次世界大戦と「無名兵士」追悼のかたち 森ありさ
  第13章 帝国の逆襲―ともに生きるために 井野瀬久美惠
  第14章 ニュー・カルチャーの誕生?―1960年代文化の再考 市橋秀夫
エピローグ ゆらぐアイデンティティ―「イギリス人」のゆくえ


個人的には、『識字と読書―リテラシーの比較教育社会史』(松塚俊三・八鍬友広編、昭和堂→詳しくはこちら)でお世話になった松塚先生が、本書に執筆された「第5章 教育と文化―連合王国の教育文化史」で、綴り字改革運動(→詳しくはこちら)のことが言及されていたことが嬉しかったです。

ウェールズの経験は学校を包み込む地域社会の教育文化を考えさせるだけでなく、英語が定着していると思われるイングランドの言語文化についても改めて再考を促しているように思われる。19世紀から20世紀にかけて繰り返されてきた英語の綴り字改革運動は、発音と綴り字の落差がいかに大きかったかを示しており、標準英語の定着(方言の克服)には相当な時間を要したはずである。また、英語の標準語化は帝国にも敷衍して考えるべき問題を提起していた。綴り字を発音に近づける試みは、英語を国際的な共通語にしなければならない帝国にとっても重要な懸案事項であったろう。(p.105)

イギリス文化史

イギリス文化史

識字と読書―リテラシーの比較社会史 (叢書・比較教育社会史)

識字と読書―リテラシーの比較社会史 (叢書・比較教育社会史)