『アバター』のナヴィ語と英語
正月休みに『アバター』(Avatar、ジェームズ・キャメロン監督、2009年)を見に行きました。
物語の枠組がとてもおもしろかったです。これをオリジナルで作るっていうのは、すごいなあ。
地球とパンドラ星、地球人とナヴィ族の間に見える、文明vs自然、進歩vs未開という二項対立が、シンプルすぎるきらいはありましたが、海兵隊員(サム・ワーシントン)が、ひょんなことからアバタープログラムに参加することになり、ナヴィとよくにた肢体のアバターになって、パンドラ星をかけまわる解放感を描くというところに、物語的説得力がありました。
ナヴィ族は、ナヴィ語(Na'vi)と呼ばれる言語を話していました。地球人のなかにはナヴィ語を学んでいる人がいて、ナヴィ族のなかには英語を話す人がいます。アバターを開発するくらいの科学技術を備えた人類が、21世紀と同じような方法で外国語(?)学習を行っていたり、帝国主義時代の植民地のように、「学校を建て、英語を教えて」いるのには、びっくりしました。それこそ自動翻訳機くらい開発できていそうなものですがー。
ともあれ、ナヴィ語は、この映画のために、南カリフォルニア大学の言語学者ポール・フロマー教授が作ったそうです。創作言語を含んだ新しい世界の構築という点から、トールキンの『指輪物語』(+映画『ロード・オブ・ザ・リング』ピーター・ジャクソン監督)を思いだしました。そのジャクソン監督がアバター本の序文を書いているようなので読んでみたい↓
The ART of AVATAR ジェームズ・キャメロン『アバター』の世界 (ShoPro Books)
- 作者: ピーター・ジャクソン(序文),ジョン・ランドー(前書),ジェームズ・キャメロン(エピローグ),リサ・フィッツパトリック,菊池由美,ないとうふみこ
- 出版社/メーカー: 小学館集英社プロダクション
- 発売日: 2009/11/28
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ナヴィ語について。
このサイトのフロマー教授へのインタビューによると、ナヴィ語はまず、キャメロン監督が、脚本を書く段階で30−40の固有名詞や名詞を作っていたそうです。フロマー教授は、それを生かして、ナヴィ語の音の仕組み(音声学的・音韻論的特徴)を決めたらしい。そのときに、/pks/や/tks/など、西洋の言語ではあまり耳にしない子音連続を用いることによって、異星語らしさをだしたとか。また、ナヴィ語では、強勢(stress)は有り、母音の長短の区別は無、声調(tone)も無。
さらに文法的特徴としては、語形変化が接頭辞や接尾辞ではなく、語のなかに付く接中辞で表されることや、自動詞の主語と他動詞の主語に別の格を与えること、など。(さらに詳しくはこちらのサイトなど)。ナヴィ語を話す俳優たちには、フロマー教授が台詞を録音して渡したそうです。
ナヴィ族の話す英語について。
rの音が強かったのが聞いていて印象に残りました。それから、スラングがないことが、地球人―とくに悪役大佐(ピーター・ラング)―と対照的でした。学校で習った英語だからですね。ネイティリ役のゾーイ・サルダナはこのインタビュー記事で、「ナヴィ語を母国語とするネイティリが、ナヴィ語のアクセントで英語を話すこと」が一番難しかった、と話しています。
(→ナヴィ語と英語の間の言語切り替え(コードスイッチング)についてはこちらの日記)