「日本軍が(英領)インドで撒いた宣伝チラシ」

大阪外大ヒンディー語名誉教授、溝上富夫先生の講演「日本軍が(英領)インドで撒いた宣伝チラシについて―別の視点から今次大戦をふりかえる」をききに三宮の関西日印文化協会にいきました。 

「伝単」(でんたん)とよばれる、戦時に投降をよびかける宣伝チラシについては、先行研究があり、インドでの伝単については

紙の戦争・伝単―謀略宣伝ビラは語る

紙の戦争・伝単―謀略宣伝ビラは語る

でまとめて紹介されているとのこと。この資料をもとに、言語的分析を加えての講演でした。
インド東部でまかれたほとんどの伝単が、ヒンディー語ウルドゥー語ベンガル語の三言語併用で、日本語の原本の翻訳であろう、と。その翻訳上の工夫やミスについてもお話がありました。

本題もさることながら、先生がこの講演内容を昨年インド5都市でヒンディー語でされた時のお話なども大変興味深かったです。また、モディ首相がアメリカ訪問した際に、オバマ大統領とヒンディー語でわたりあったことの意味を強調されたのが印象的でした(モディ首相は強いヒンディー語推進派とのこと)。わたくし自身、世界諸英語研究のなかで、インド英語を取り上げることもあるのですが、多言語国家インドにおける各言語の役割、歴史と現在というのはよくわからないままで英語をとりあげているのだということをあらためて思いました。

溝上先生の外大でのヒンディー語教育についてのご本はこちら。こちらもとてもおもしろかったです。

旅芸人は楽し―ヒンディー語劇海外公演の記録―

旅芸人は楽し―ヒンディー語劇海外公演の記録―

実は、今回の講演を聞きながら、外国研究のプロになるために、初期段階で言語習得につぎ込むエネルギーと時間をあらためて考えていました。自分などは英語だがそれでも随分言語習得自身に費やしたと思います。大学初修語はそれとは比べ物にならないはずで、しかも文字から学ぶ言語というのはさらに大変なことでしょう。結果、成果がすぐに求められる環境では厳しいが、でも言語習得は基礎の基礎、ということなども考えました。