『沈黙の画布』

『沈黙の画布』(篠田節子新潮文庫)を読みました。久しぶりに小説を寝る間を惜しんで読みました。おもしろかったです。

無名の地方画家が、エッセイでとりあげられたことから脚光を浴びるようになる話。画家はなくなっていて、著作権を持っている画家の妻は高齢で、気難しい。夫を天才と思い、一生をささげた妻の思いが、夫の作品が認められるようになったときに、どう変わっていくのかー。

主人公はエッセイ掲載雑誌の男性編集者。で、この雑誌の女性編集長の造形が、うーん、すごかったです。頼りない女性管理職に向ける男性部下の容赦ない目がぐさぐさと読んでいて胸にこたえます。さすが日経連載(笑。篠田さんお得意の大どんでん返しはあるのか?と思いながら読んでしまいました。 たとえば、編集長だから用事があるときは、自分の机に部下を呼べばいいのに、彼女は自分から相手の机に出向いていく、など。ええやんか別に?と思ってしまいますが、これってやはり私は職場で上に立てないタイプなんでしょうか^^;

文化・芸術の流通構造モノ、ということで篠田さんの『讃歌』(ピアニスト再生)と対になるかんじです。いや、それにしても、日経連載時に時々読んでたけど、単行本刊行を見逃してましたよ。なぜか。現在も単行本で新刊小説を買う数少ない作家さんのひとりなのにねー。でも、おかげで今新たに読めてラッキーでした。

沈黙の画布 (新潮文庫)

沈黙の画布 (新潮文庫)

讃歌 (朝日文庫)

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