冗談も敬語もすり減る

夫と子どもの会話を聞くともなく聞いていると、調子に乗ってふざけ続ける子どもに、夫がThe joke is wearing thin.(その冗談は聞きあきた)と言っていました。直訳すると「その冗談はすり減って薄くなっている」。

なるほど。使われたのを聞いたら意味はわかるけれど、自分では使わない表現でした。The joke is getting old.と言うかな。

worn-out jeans(擦り切れたジーンズ)などで使うときの wear と同じで、The joke is wearing thin.は、冗談のおもしろさが擦り減って薄くなっていくかんじ。

「冗談がすり減る」と同じ発想の日本語表現として、「敬語がすり減る」という言い方をするのを思い出しました。たとえば、「おまえ」や「きさま」が歴史的には尊敬語であったのに、時がたつにつれて、敬意がなくなり、いまでは反対に敬意を欠いた表現として使われる、のような意味の劣化のこと。また、尊敬語「おっしゃる」だけでは敬意が足りない(=すり減っているので)ような気がして「おっしゃられる」とさらに尊敬表現をつけてしまうような例。