3 Idiots (3バカに乾杯!)

3 idiotsという2009年のインド映画をDVDで見ました。ラジクマール・ヒラニ監督。日本では劇場未公開、DVDも出ていませんが、2010年のしたまちコメディ映画祭in台東で「3バカに乾杯!」という邦題で上映されたようです。先日AsiaTEFL2012でインドに行ったときに、おもしろいと勧めてもらったので、帰国後アメリカ版DVDを購入したのでした。いやあ、非常におもしろかったです。3時間近いので、何回かに分けて見ようと見始めましたが、あまりの面白さに一気に見てしまいました。言語はヒンディー語(たぶん)で、ときどき英語。英語字幕で見ました。

インドのエリート工科大学(モデルはIndian Institute of Technology)で学んだ学生たちが、10年後に成功しているのはだれか確認しようという約束の通り、再び集まり、学生時代を回想する物語です。おばかコメディのなかに、教育とはなにか、高等教育の意味、社会的分断、みたいなところがしっかり入っていて、深いです。何回かほろりとしました。つめこみ教育、競争が厳しい社会のなかで、エリート大学に入ってくる学生たちが、それぞれ異なる社会階層、バックグラウンドを背負っている。昔ながらの学問価値観を体現したパワハラまがいの教授が悪役として登場。大学教員、学問マインドに、かなりぐっとくる映画で、関係者には、特におすすめです。

主演のアーミル・カーンの芸達者ぶりにも、うなりました。ちょっとトム・ハンクスみたいです(いや、最近の貫禄ついたトハンクスじゃなくて、スタンダップ・コメディアンの役やってたような頃の)。三の線のかなり入ったぎりぎり二枚目というところにあえてつけているかんじ。目をぎょろっとさせたり、大げさなジェスチャーをしたり、というかんじがその連想を誘いました。(そしてその連想からいくと、『フォレスト・ガンプ』に似た感じの映画かも、と思います。内容は全然違うのですが、少し風変りな主人公にまわりのひとがだんだん感化されていくようなところや、時代の空気に合って大ヒットとなったようなところが。2010年のインド映画関係の賞を総なめしたようです。)

脇を固める友人役も、悪役教授役も同級生役も、個性派で印象的でした。ハリウッド映画ばかり見ていると、出てくるインド系俳優はわりと限られていて、役柄も限られている印象ですが、さすが、本場インドの映画にはいろいろな役者さんがいて、見応えがあります。

悪役教授にすりよるガリ勉優等生(The Silencer)チャトゥルは、ウガンダから来たインド系ウガンダ人という設定です。(ウガンダのインド系住民はアミン政権下で迫害、追放され、インドに移住、亡命した人が多くいます)。このインド系ウガンダ人学生は、物語的には敵役なのですが、でも彼には「あの呑気そうなお気楽そうなふざけたインド人学生三人組3 idiotsに負けるものか」という強い思いがあるわけです。特に主人公には負けたくない。このあたり敵役の設定の細部にまで意識がはりめぐさられていて、監督・脚本、うまいなあと思いました。(原作はChetan BhagatのFive Point Someone)



ともあれ、映画好きでよかった、としみじみ思える映画でした。いわゆる歌と踊りのボリウッドというイメージとも違う、より普遍的に共感できるこういうインド映画が、日本で見られるといいのにと思います。ぜひ劇場公開を。それがむりなら、DVDを。

3 Idiots [DVD] [Import]

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Five Point Someone

Five Point Someone

(2015年の付記:チャトゥルは何歳?ウガンダのインド系追放は1971年からで1972年にはほとんどのインド系が国外に逃れたと言われているので、他の学生よりかなり年長の学生だったのでしょうか?)