『タイム・バインド』

『タイム・バインド―働く母親のワークライフバランス 仕事・家庭・子どもをめぐる真実』(ホックシールド読了。ホックシールドは、卒論で感情労働を扱っていたひとがいたときに初めて名前を聞いた。セカンドシフトといい、影響力があるアメリカの社会学者。自分で読んだのは初めて。

ファミリーフレンドリーな企業でも、時短や長期育休をとるひとが少ないのはなぜか?という問いに、筆者は実際に企業勤務するひとたちにインタビューしながら答えて行く。時短などをとらないひとたちの答えは、「真剣なプレーヤー」とみなされなくなるから、職場のほうが居心地がいいから、など実例を多数交えて語られる。

「真剣なプレーヤー」とは、時間を気にせずに仕事をするひとのこと。一番印象的だったのが、喘息のこどもの注射につきそうために定期的に早退する秘書的仕事の女性の話。「時計ばかり気にしている」できないやつ、と上司からは見なされている。この章の両者のすれ違いが見事すぎて圧巻だった。

そうか、こういうことだったのか、と読みながらわが身におきかえても思うことが多かった。自分自身は常に時計を気にしているほうだと思う。
大学教員という仕事はこの本に出てくる企業勤務のひとたちほど時間に縛られているわけではないけれど、授業、会議、校務以外の執筆時間などは時間がいくらあればいいというものでもないので、仕事をきちんとしようとすると(そして、仕事はきちんとするのがあたりまえ!)、時間貧乏感、時間への飢餓感が強まる。今、特に、子どもの夏休みなので、タイムバインド感(時間に縛られてる感)が半端ない。

今はそうでもないのだが、数年前の一時期、議事進行がゆったりした集まりだと、本当に胸が苦しくなるくらいで、でも他のひとはまったく平気そうなので、自分がおかしくなったんだろうと感じる時期があった。最近はそういうふうに感じることもめっきり減ったが、一時期極度にそうだった。(一方で、遅刻があって、集まりに遅れて行って皆の時間を奪っているー、本当に気をつけなければ。。)。

(ただ一方で、自分自身の研究者としてのキャリアをふりかえると、著書、学位につながるまとまった仕事ができたのは、第一子を産んでからの7、8年でもある。つまり、もっともタイムバインドだった時期が自分にとっては一番生産性があった時期ともいえる。これは、もう、時間がなくなったと腹をくくったことと、いろいろなことから手を話したこと、それから、子どもを産んで今一度気持ちとしてパワーアップできたからでもあるのよね、このあたりは、もう単なる自分語りになってしまうけれど。)