騒擾のロンドンで「トップガールズ」

ロンドン大学夏期音声学セミナーを受講しています。ロンドン暴動の直接的な影響は受けていませんが、通りに警官が多いです。音声学セミナーの成果はまた別の機会に書くとして(実は日記をアップしたつもりがアップされてなくてかなりショック・・)、今日は「トップガールズ」という芝居をトラファルガー・スタジオ劇場で見たので、それについて。

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Top Girls
キャリル・チャーチル(Caryl Churchill)の1982年初演の芝居。
Trafalgar Studioの最前列で。最前列って、舞台の上でびっくり。。

サッチャー政権初期のイギリスが舞台。 人材派遣会社で働く女性たちの様子がメインだけれど、第一幕に、非常にシュールな、古今東西の有名な女性7人が一堂に会してディナーをとる場面があるので、芝居として、構造がチャレンジングなものになっている。(Lady Nijoという日本人も)

この芝居、この4月にシアターコクーン寺島しのぶ他で上演したんですね。みたかったな。
ただ、シアターコクーンーでの宣伝に使われた「史上最強のガールズトーク」という描写は、ここ数日のロンドンの騒擾で、すっかり変わったと思う。

この芝居の初演の1982年といえば、今回のdisorder(騒擾)で「1981年以来」として言及される1981年の暴動の一年後。サッチャー政権下(1979〜1990)で広がった貧富の差、社会的不平等を下敷きにした芝居なのだ。そして、1981の暴動が、今回の暴動と何らかの意味で重なるとき、この芝居は極めて大きな時事性を帯びたアクチュアルな意味を持つ。

そもそも、これはガールズトークなんてもんではない。
ここにあるのは力強い怒りに満ちたフェミニストのメッセージだ。シュールな第一幕では、古今東西の女性のエピソードを通して、女たちのリプロダクティブな宿命が語られている。

そして、2幕以降も決して「80年代ロンドンのキャリアウーマン」の物語ではないのだ。主人公のマーリーンは、故郷を捨て、子どもを捨てて、ロンドンに出てきて仕事に邁進している。そして、故郷で彼女の子どもを実の子として育てている彼女の姉の貧困と苦悩は、サッチャー政権下で陰になった部分として描かれているー。マーリーンがサッチャーをたたえ労働組合を批判するのに対して、姉が敢然と反論する場面が印象的である。

Top Girls (Modern Classics)

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