『旅路の果て』@デュークオブヨーク劇場

『旅路の果て』Journey's End

デュークオブヨーク(Duke of York)劇場、 E7 Stalls、 19:30- 2h40m

第一世界大戦末期の西部戦線。1918年3月21日未明、ドイツ軍の猛攻により、3万6千人のイギリス兵が犠牲となった。この史実をもとに、それに先立つ4日間の、将校、兵士の日常生活を描いた芝居。

実際に従軍していたRCシェリフのオリジナルの戯曲は、1928年12月にロンドンで初演され、大人気を博した。今回、私がこの芝居を見に行ったのは、『タイムアウト』誌で、今週の一押しとして非常に好意的な劇評が載っていたので。 映画化もされたらしい。(邦題は「暁の総攻撃」(1930))

芝居としては、舞台は、兵営の一室。酒浸りになっている将校や、精神的に参ってしまい戦線離脱を訴え続ける兵士などの会話が続いている。ので、物語的には平板。 一幕は、1918年3月18日。二幕は、同年3月19日。三幕が 同年3月20日から、21日の夜明け。

二幕一場のあとで、休憩があった。が、前半は、話の流れがつかめないのと、劇のおもしろさがわからないのと、あと、時差もあって、なんか眠気と戦いながら見ていました。

でもこれではいかんと思い、幕間で、プログラムを熟読。 見どころとしては、将校や兵士の描き分け(キャラが立ってるひとをおさえる。話し方も異なる)っていうところだということなんで、そのあたりに注意して後半。

そして、後半はまあ、物語的にも動くんで、しっかり楽しめました。たとえば、神経的に参ってしまって、前線を離れたいという部下を、今ここを出て行ったら脱走兵として射殺するぞ、と将校が脅す場面や。その将校は酒浸りになっていたり。

ラストは、幕がおりて真っ暗ななかで爆撃音が延々と続きます。そして、幕があがると、10数人の兵士たちが一列に並んでいて、動かない。そのうしろには、白い壁に戦没者の名前が小さく一面に書いてある背景。全員が戦死したことが暗示されます。 カーテンコールも、このままの姿勢で。役者さんたちもほとんど表情を変えずに。幕があがったり、降りたりを数回。

まあ、客層としては、芝居好きなひとたち、というかんじでした。両隣りとも、20代後半ぽいカップルのデートだった。なぜにこの芝居を?? そして、幕間のまわりのひとの話などを聞いていると、やっぱり、第一次世界大戦というのが、国民の記憶として、かなり共有された物語があるんだな、ということを思いました。

なんというか、ちょっと性質は違いますが、日本だと明治維新なんかに対しては国民的物語がかなり共有されている(ドラマなども多いし)と思うのですが、そんなかんじ。

そうそう、昨日は、音声学セミナーの午後のレクチャーの先生(オックスフォード大学のリンダ・マグルストーン教授。この話はまた項を改めて)と話をする機会があって、これからjourney's endを見に行く、と言ったら、その先生も見たということで、おもしろかったと言っていました。憧れの先生なので、うれしかったな。

彼女は、WW1についての本を書いているところということで。なるほど、開戦百年の2014年までもうすぐなので、そのあたりを見越しての執筆なわけですな。 そういえば、『西部戦線異状なし』という小説がありましたが、読んだんだったかどうかも忘れているー。

しかし、まあ、最近の居心地のいいシネコンに慣れた身には、19世紀から続いている劇場の、椅子の狭さとか、段差の少なさ(前に大柄なひとが座ると見にくい)や、縦長で、後ろのほうの席だとかなり遠いことなんかが、結構不便だわ〜。まあ、そういうクラシックな劇場を楽しむのもひとつの魅力なんだけど。

Journey's End (Heinemann Plays For 14-16+)

Journey's End (Heinemann Plays For 14-16+)

Journey's End [VHS]

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