『冬の喝采』

(英語とも映画とも仕事とも関係ない趣味で読んだ本について。)

『冬の喝采』黒木亮著。ネットで評判を読んでいたので購入したもの。おもしろかったです。

銀行証券会社に勤務したあと金融小説を書いている著者の、中学生〜早稲田の競走部で箱根駅伝を走るまでの陸上半生を自伝的に描いた小説。初めは自分史風の回想文体にちょっと戸惑っていたのですが、だんだん事実は小説よりも奇なり、というか、事実のもつ重み、迫力に圧倒されてきて、結局、文庫本上下二冊、一気に読みました。

この自伝小説の軸はふたつあって、ひとつは主人公(著者)が早稲田大学競走部(陸上競技、という語ができる前の創部なので競走部というそうです)でであった中村監督のスパルタぶり、常軌を逸したともいえるような言動。お母さんが亡くなったので葬儀に郷里に帰りたいという部員に、そんなことをして母親が生き返るか、というなど。今だったら、ハラスメントというか人権侵害というかで大問題になりそうな恫喝や暴言の数々。いやいや、大学教員的目線で読むと、ああNG!!と思う場面の連続です。

(コンパでのお酒一気飲みシーンなんかも、今では完全にNGですね。しかも未成年だし。。いやこういうことをいうと無粋なのかもしれませんが、でもこのあたりの飲酒をめぐる文化はこの数年でずいぶん変わったと思う。村上春樹の初期の小説でもビールを飲んだあと車を運転するところが結構あってなんだかどきどきします)

もうひとつの軸は、北海道出身の主人公(著者)の故郷への思い。著者紹介に「道路北海道記録」を塗り替えたことがあって、最初、道路は復路か往路のタイポかと思ってしまった。。この記録の位置づけなども本文中でああなるほど、と思わせるものでした。

冬の喝采(上) (講談社文庫)

冬の喝采(上) (講談社文庫)

冬の喝采(下) (講談社文庫)

冬の喝采(下) (講談社文庫)