『欲望という名の電車』

梅田芸術劇場で上演された、『欲望という名の電車』を見に行きました。テネシー・ウィリアムズの原作の、小田島恒志翻訳版を、手をいれずにそのまま使うという演出(松尾スズキ)でした。

ニューオリンズの小さなアパートで、ポーランド系移民のスタンリー(池内博之)と結婚して暮らすステラ(鈴木砂羽)のもとに転がり込んできた姉のブランチ(秋山菜津子)。姉妹はミシシッピの名家の出身ですが、その家はすでに人手にわたったことが、姉からあかされますー。

なんというか、いかにも「新劇の古典」、テネシー・ウィリアムズ!でした。その昔、労演の例会で見た社会派リアリズムな芝居の雰囲気を思い出しましたー。もちろん今回は、笑いの要素もミッチ(オクイシュージ)の髪の毛ネタなんかであるのですが、でも、まあ、それはあくまで技術的なものであって、基本はリアリズム路線。ウェルメイド感は限りなくゼロに近いー(こういう登場人物がでてきたら、ここでこう魂の触れ合いがあったりロマンスの花火があがったりするんだろうな、というような劇的モーメントがことごとく肩すかしにあいー)

20世紀半ばのアメリカ南部の名家の没落という時代固有性はあまり感じられなくて、むしろ、現代的、東電OL事件のような印象を受けました(>と思うのは、最近『女嫌い』(上野千鶴子著)で、この事件について読み直したせいでもあるのですがー)。

ともあれ、主演秋山菜津子さんの堂々としたザ・女優ぶりや(女優として一度はやりたい役なんだろうなーというかんじの大役)、池内さんの脱ぎっぷりに圧倒された3時間でした。

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欲望という名の電車

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ところで、本筋とは関係ないのですが、カーテンコールが一度だけだったのは、かなり残念でした。あとは拍手をしても「節電と安全のためカーテンコールはありません」という笑いを含んだアナウンスが流れたんですけど。持っていた花束をわたしそこねたような(実際は持ってない)、ありがとうを伝え損ねたようなさびしさからしばらくたちなおれなかったですorz (→あとから、きいたら、一度だけ、というのはよくあるよ、ということだったんですが、ウェストエンドやミュージカル系の何度も出てきてくれるパターンに慣れているので期待が〜)