ウェストミンスター寺院という呼び方
イギリスの王位継承第二位のウィリアム王子の結婚式が、ウェストミンスター寺院であったのを、NHKのBS放送や、BBCWorldの放送で見ていました。ウェストミンスター寺院、と日本語で言われますが、英語ではWestminster Abbey。 キリスト教のAbbeyがなぜ「寺院」?というような話を友達としていて、気になったので少し調べてみました。
Westminster Abbeyの英国国教会における位置づけ、というのもあるのですが、とりあえず、なぜ一般に「修道院」を意味するAbbeyを、Westminster Abbeyでは「寺院」と訳していて、それが定着しているのか、という点について。
国立国会図書館のウェブサイトにある「近代デジタルライブラリー」(→こちら)で、日本初の英和辞典、『英和対訳袖珍辞書』を見てみました。初版は1862年ですが、デジタルライブラリーに入っているのは、1869年(明治2年)の増補版です。
それによると、abbeyは「寺院」、cathedralは「開元の寺院」、一方church自体には「教会」という訳語はなくてchurchmanが「僧」。 なるほど、幕末〜明治初期はこういう訳語ですね。
Westminster Abbeyが、比較的早い段階で「ウェストミンスター寺院」と訳され、そのまま訳語が定着した、というかんじでしょうか。ロンドンのセントポールはCathedralだけど、慣用として、「セントポール(大)寺院」ということもありますね。あと、パリの「ノートルダム寺院」とか。やはり明治日本が出会ったヨーロッパの名刹にあてられた「○○寺院」という訳語が、固有名詞的に残っている、というかんじでしょうか。
青空文庫で「大寺院」を検索してみると、芥川、野上豊一郎、菊池寛(フランダースの犬の翻訳)などで、ヨーロッパの「大寺院」について書いているのがでてきます。夏目漱石の『倫敦塔』くらいに、どんぴしゃでてこないかと思いましたが、さすがにそういう話でもなくて、「聖(セント)ポール寺」という記述があるくらいでした。要継続観察、というかんじです。
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・・・ところで、うちの息子(小学3年生)が、テレビを見ながら、in sickness and in healthなど、結婚の誓いの言葉を復唱しているウィリアム王子を見て、「なんでくりかえしてんの?」と尋ねてきました。誓いだと説明すると、「なんや、英語ができるかどうか確かめてるわけじゃないんやな」と。笑わせてもらいました。 ウィリアム王子、ケイト妃、お幸せに!