『シューマンの指』

シューマンの指』(奥泉光、2010年)読了。

(英語とも映画とも関係しませんがー)。ヨーロッパ文化やクラシック音楽への憧れが中核にあるところが欧米言語文化的かな、と思うので紹介します(牽強付会?)。ピアニストを目指していた十代の思い出と、そのときに出会った早熟な才能ある少年との出会いを回顧する中年男性の手記形式の小説です。

シューマンの指 (100周年書き下ろし)

シューマンの指 (100周年書き下ろし)

読み始めてしばらく読み進めるのがもったいなくて、何回か本を閉じながら読んだ小説は久しぶりでした。昨夜寝る前に読み始め、今日花見ピクニックで続きを読み、家に帰って読み終えましたー。教養主義的というか文学部的な感じが10代後半に読んでいた小説(福永武彦や辻邦夫など)を思い出しながら読みました。

学生時代に文芸サークルで学祭に奥泉さんに来ていただいたことなど思いだしながら読んでいました(→追記:あとでみたらこれは記憶違いで、古井由吉さん×奥泉光さん対談@京大時計台は、1993年11月のおとでしたー。わたしは就職一年目だったけど行ったんでしたー)。

シューマンを語る文章が見事で。読み終ってから、よせばいいのにピアノを弾きたくなって弾いてみて、自分のピアノの音に不機嫌になってしまいました(笑)。青春の思い出のなかの生硬な音楽風景を振り返る視線に、篠田節子『カノン』を思い出しつつー、それにしても語りの構造が凝っているなあ、(で、やはり終わり方は篠田さんとはまた趣がちがうなあ)と楽しみつつ。

書名はこれまでも目にしていたけれど、読もうと思ったのは、ふらっと入った書店で偶然目にして手にとってみて、懐かしいにおいのする文体に引き込まれたからでー。やはりリアル書店でしか出会えない本があるなあ、と思いました。