『京都の中のドイツ』

『京都の中のドイツ』青地伯水編、春風社、2011年)。 欧米言語文化学科の同僚の編著書が刊行されました。

目次
第1章 祇園祭山鉾行事の運営とゲルマニスト―ドイツ市民文学研究者の京都町衆としての視点(深見茂)
第2章 「京あるいは都は日本語では都市の意味である」―ドイツでの日本・京都のイメージ形成(渡邊伸)
第3章 大正期京都における社会教育論の可能性海野幸徳の社会事業論・社会教育論とドイツ社会的教育学(吉岡真佐樹)
第4章 女性と社会海野幸徳の社会事業理論の形成とドイツ女性運動(吉岡いずみ)
第5章 ウィーン分離派と京都夏目漱石の描いた「セゼッション式の一輪瓶」(高橋麻帆)
第6章 「世界史的立場」と「モラリッシェ・エネルギー」―京都学派右派による近代の超克(青地伯水

京都の中のドイツ

京都の中のドイツ

平成20、21年の京都府立大学地域貢献型研究(ACTR)の研究成果、昨年3月府大で開かれたシンポジウムの成果(→こちら)を発展させた内容です。


(非常に個人的な感想。)・・シンポジウムのときに興味を持った「ウィーン分離派と京都」。19世紀末ウィーンの芸術運動「分離派」(Secession)が、日本で「セセッション」「セゼッション」として紹介され、その流行の発信地が京都であったことを論じた章です。

この章は、内容の興味深さもさることながら、本書、160頁(一面全部!)の「芥川龍之介肖像写真」(1926年、近代文学館所蔵)が、ちょっと息を飲むかっこよさですー。。

着流しにスリッパ姿で、暖炉脇のソファに腰かけている芥川の姿がそこにある。洋風にしつらえられた部屋のテキスタイルや暖炉は、ホフマンの造形を思わせる(「ウィーン分離派と京都」161頁)
    
 当時、活躍していた芥川龍之介夏目漱石谷崎潤一郎といった文豪たちも、「セセッション」様式をその作品に登場させている。(略)
 芥川はその中でも、「セセッション」をもっとも頻繁にその作品に登場させている。
  セセツシヨンの書棚買はむと思ひけりへりおとろぷに小雨降る朝 (「ウィーン分離派と京都」158頁)