『きみを想って海をゆく』

「きみを想って海をゆく」 (Welcome、2010年、フィリップ・リオレ監督・脚本)

京都シネマでみました。ドーバー海峡を泳いでイギリスにわたろうとするクルド人難民の少年と、彼に水泳を教えるフランス人男性の交流を主軸とする物語です。男性が少年に関心をもつのはなぜかが、劇進行のなかで明らかにされていき、小さな伏線が回収されるたびに、ああと思う。脚本うまいー。

映画前半は密航の試みの緊張感、中盤は(メロ)ドラマで引っ張り、最後まで一気に見られました。原題はWelcomeだが、フランス語が中心で、あとクルド語、英語。 (中盤以降、この映画、水泳コーチ役のヴァンサン・ランドンに頼りすぎじゃないか、と思わなくもないんだけど、このひとが渋かっこよかった)。

この映画と直接関係はありませんが、カレーからイギリスへ向かおうとする難民が密航の準備をしながら滞在するキャンプができていることについては、今年度後期に「メディアイングリッシュb」の授業で使っていたBBC Understanding the News in English (金星堂、小野田榮、Lucy Cooker編著)のなかで出てきたことで、知ったものでした。

↓以下、少し詳しく話の展開に触れています。

水泳コーチが、クルド人の少年に関心を示す理由が、話の流れのなかで明らかになり、また、変容してもいきます。これがとてもおもしろかったです。コーチは離婚調停中で、妻は教師で難民支援ボランティア活動にも熱心。その妻の心をなんとかとりもどそうという気持ちから、難民の少年に親切な自分を彼女に見せる。けれど、やがて、この少年に対して、もし自分に子どもがいたならこういう年頃の子どもだったのではないか、というまなざしをむけるようになる、というところ。切ないです。私的には今年これまで見た中で、一番映画的カタルシスが大きい、いい映画でした。