『孤高―国語学者大野晋の生涯』

『孤高ー国語学者大野晋の生涯』(川村二郎著、東京書籍、2009年)をしばらく前に読みました。いつかこういう仕事がしたいなあと思いながら読んでいました。いえ大野大先生ではなくて、評伝著者のお仕事。

孤高 国語学者大野晋の生涯

孤高 国語学者大野晋の生涯

著者あとがきに「急いで評伝を出しておかないと、大野さんのお名前が忘れられてしまうかもしれませんよ」と編集者にいわれて書くことにしたとあります。「日本語の好きな普通の人が読んでわかるように、先生のお人柄を中心に書いてくださればいいんですよ」(269)とも。まさにそういう本でした。東京下町育ちの生い立ちの話や、父親(南画好きの商売べたな砂糖商)とのやりとりがおもしろかったです。もちろん、日本語のタミル語起源説の調査の話も。

自分がいつ大野晋という国語学者を知ったのかを考えていたのだけれど、中学時代だと思います。国語の教科書に載っていたのか、教材だったのか、それとも、新潮文庫の百冊に入っていたのかー。国語の先生がよく話していた記憶があります。授業で学生さんにこの本の話をしてみたけれど、大野晋の名前を聞いたことがある人はいなかったようで、ちょっとびっくり。編集者の危惧はありえない話でもないのかー。