『ちょんまげぷりん』の著者は男性か?

映画公開間近で話題になっている『ちょんまげぷりん』(荒木源著、小学館)。しばらく前に、原作小説を、タイトルと表紙につられて書店で手にとり、読みました。

江戸時代からタイムスリップしてきた侍と、ワーキングマザー(息子は保育園児、離婚して二人暮らし)の話です。設定のおもしろさと、細部のおもしろさにひっぱられて一気に読みました。

ディテールがおもしろかったのは、「侍」部分の、パロディぽさ、パスティーシュのような味わい。それから、「ワーキングマザー」のしごとの部分でした。勤めから帰ってあわてて夕食の用意するときに、炊いて冷凍しておいたご飯を解凍するところのリアルさとか。砥石を使っていないところとか。等身大日常感覚で、ああそうそうと思うエピソードが多かったのです。

それで、読みながら、つい、著者の荒木源さんって男性名だけど、実は、女性ではないの?と思ってしまいました。小さい男の子の描き方の細部のエピソードも特に。 文体を元に、書き手の性別を云々することが危険であることは、重々承知しているはずなのですが、ついそう思ったのでした。

でも、あとから友人に、荒木源さんは男性で、退職のち専業作家&子育てしていらっしゃると教えてもらいました。なるほど、その経験に裏打ちされてあのリアリティがあるのねと思いつつ、やっぱり、書かれたものから軽々に、これは女っぽいとか男っぽいとかゆってはいかんのだ、と思ったことでした。ジェンダーと言語、とか講義しているんですから…(→講義日記はこちらこちら

ちょんまげぷりん (小学館文庫)

ちょんまげぷりん (小学館文庫)

書かれたものから著者の性差を云々するときのステレオタイプ的思考について考えるときに、事例研究として思い出すのが、論文「言語性差のステレオタイプ−「今田勇子」への「識者」のコメントを読む−」武田春子著(『女性学年報』第11号、1990年)。