綴り字改革運動を支持した19世紀の言語学者たち

京都大学で開かれた近代英語協会第27回大会で、「綴り字改革運動を支持した19世紀の言語学者たち」という研究発表をしました。

発表の目的は、レジュメ風にいうと、「19世紀の言語学会(Philological Society)の会員たちが、なぜ、どのような動機・目的から綴り字改革を論じたのか1881年発表の学会公認案"Partial Corections of the English Spellings"を中心に、同時代の他の綴り字改革論との関係に留意しながら論じる」というものです。

『英語の改良を夢みたイギリス人たち―綴り字改革運動史1834−1975』の第5章、第3章の内容を中心としたものです(目次はこちら)。これまでに出版していない資料としては、1877年の綴り字改革公開会議の主催者77人の氏名と属性(+αの調べたこと)一覧を今回作りました。

結論は、再びレジュメ風に書くと「まとめ。言語学会が綴り字改革論に取り組んだ背景・目的:(1)音声学・語源学などの専門的知見を生かした案を出すという目的。(2)音声言語重視の言語観。(3)基礎教育効率化を求める社会の意識のなかで起こった学務委員会請願運動との連動。(4)熱心な個人が団体を動かす仕組み―アソシエイションの時代

このなかで、(3)について資料の裏付けを示したこと、また、(4)の視点を指摘したところが、比較的セールスポイントとなりうる部分ではないかと考えていますー。(4)については、『世紀転換期イギリスの人びと アソシエイションとシティズンシップ』から学ぶところが多かったです。

世紀転換期イギリスの人びと―アソシエイションとシティズンシップ

世紀転換期イギリスの人びと―アソシエイションとシティズンシップ

近代英語協会では、1994年に就職二年目に研究者人生二回目の学会発表(外部の学会としては初めて)をしました。1990年代の後半に少し事務局のお手伝いをさせていただいたあと、しばらく退会していて、再び参加させていただきました。質問やコメントを、発表時や懇親会の席でいただき、とても勉強になり、また、大きな励みにもなりました。ありがとうございました。精進します。