『プレシャス』とgood/wellの用法

『プレシャス』(Precious、リー・ダニエルズ監督、2009年)

1980年代のアメリカのハーレムが舞台。父親から性的暴行を受け、二人の子どもを産むアフリカ系の16歳の少女プレシャス(ガボレイ・シディベ)が主人公。貧困・性暴力・教育の欠如・肥満という状況にある主人公(プレシャス)が、少人数制の代替学校(EOTO=each one teach one)や、福祉事務所を通じて、社会への「とっかかり」となるような大人とかかわりながら変わっていく様子を描いています。

社会制度がそこにあることが大事で、でも、それが人を変える力になるためには、その制度をパーソナルなレベルで実行していく「人」が要るという当たり前のことの意味を改めて考えました。たとえばEOTOの先生(またこの先生の造形が凝っている。ポーラ・ハットンは普通にきれいな女優さんなんだけど、主人公の姿に慣れたところで、彼女が出てくると、悪い人なんじゃないかという気さえしてきたり)。そしてソーシャル・ワーカーの女性など。(それにしてもあのソーシャルワーカーの女性は、配役見ても、写真みても、いまだに別人のような気がします)

一方で、教育なんていらない、福祉に頼れば生きていけるんだ、という主人公の母親(モ二ーク)もしっかりと描かれています。福祉事務所からの訪問調査時の化けぶりなども含めて。

プレシャス

プレシャス

  • アーティスト: サントラ,グレイス・ハイタワー,ラベル,マリオ・グリゴロフ,メアリー・J.ブライジ,ドナ・アレン,ジーン・カーン,サニー・ゲイル,クイーン・ラティファ,マヘリア・ジャクソン,MFSB feat.スリー・ディグリーズ
  • 出版社/メーカー: ユニバーサル インターナショナル
  • 発売日: 2010/04/07
  • メディア: CD
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プレシャス (河出文庫)

プレシャス (河出文庫)

英語めも。
・EOTOの場面で、生徒がdo goodと言って、do wellと訂正される場面がありました。goodとwellの混同、誤用が、ネイティブ話者の非標準用法として直されるポイントであるのが、同じ日に「午前10時の映画祭」で見たショーシャンクの空にで、read so goodと言って、read so wellと訂正されるのと、と偶然同じでした。英語教師的には、feel goodの場合は、SVCだからgoodでOK、と説明するところですが、ネイティブには無力だろうなと思いながら見ていました。

・ジャマイカキングストン出身という生徒がいて、彼女の英語が、プレシャスの英語とはまた違うように思ったので、DVDが出たら要チェック。
・incest(近親相姦)という言葉を知らずに、insect(昆虫)と混同しているところ。

レニー・クラヴィッツが看護師役で出ていて、プレシャスたちに、男の看護師なの?とずいぶんからかわれていた。a male nurseということで。そのあとも、nurse Johnと呼ばれていることに関しては、5月の「現代社会とジェンダー」のなかで話しましょう。nurseという語は、養育、乳母、あたりから来ているという話もからめて。