寺子屋若草物語

識字と読書つながり、というわけでもないのですが、楽しみに読んでいる時代小説のはなし。江戸時代の大坂の寺子屋を舞台にしたシリーズです。

てのひら一文―寺子屋若草物語 (徳間文庫)

てのひら一文―寺子屋若草物語 (徳間文庫)

闇に灯る―寺子屋若草物語 (徳間文庫)

闇に灯る―寺子屋若草物語 (徳間文庫)

寺子屋若草物語 夕月夜 (徳間文庫)

寺子屋若草物語 夕月夜 (徳間文庫)

三人姉妹が、寺子屋三春屋を開いているので若草物語なのでしょうが、一人足りないような…。最新巻『夕月夜』では、丙午の迷信の話も出てきて、二まわり後の丙午女として、親しみを覚えました。


三春屋の様子。

 今夜も寺子屋三春屋の一文稽古が始まった。
 一文稽古とは、江戸時代の大坂市中でしばしば見られたもので、いわば寺子屋の夜学である。
 通常の寺子屋は、朝の五つ時(午前八時)から昼の八つ時(午後二時)まで、日のある自分に稽古を行う。
 だが、それでは、昼間は親の仕事を手伝わねばならぬ貧しい職人や商人の子どもたちは、通うことができない。
 一文稽古は、そういった子どもたちのために、夜間に安い謝金で読み書きを教える仕組みであった。
 入門時のまとまった束脩などは必要なく、金の工面がついたときにだけ、一文を手にやってくればよい。
 貧しい長屋の子供には、その一文を作るのさえ毎日とはいかないが、それで構わない。来られるときだけ来ればいい。
 いつの頃からか、商人の町大坂で始まった慣わしだった。  (『てのひら一文』pp.8-9)