RとLの綴りを覚えるときに

RとLの綴り間違いについての昨日の日記(→ここ)で、「problemという単語をprobremと綴ってしまうのは、そもそも覚えるときに日本語的に「プロブレム」として覚えているので、ラ行の音がRなのかLなのかあいまいになる、というところなのでしょうー」と書きました。それに関連して考えたこと。


"Take care of the pronunciation, and the spelling will take care of itself."
「発音に気をつけなさい。そうすれば自ずと綴りはついてきます」

これは、19世紀イギリスを代表する音声学者ヘンリー・スウィートの言葉です。(A Handbook of Phonetics, 1877, Clarendon Press, p.196. 山口試訳)。スウィートは、ミュージカル「マイ・フェア・レディ」のヒギンズ教授のモデルになった言語学者でもあります。

音声学提要―A handbook of phonetics

音声学提要―A handbook of phonetics

実はスウィートは、英語の綴りが「発音に気をつけさえすれば、自ずと綴りがついてくる」ような完全な表音式綴り字でないことにいら立っており、上記の一文はこの本の巻末に添えられた、英語の綴り字改革を訴える一節(The Principles of Spelling Reform「綴り字改革の原理」)に出てくるものです。


なるほど、英語の綴りには発音を押さえておけばそれを頼りに綴りを明らかにする、というような方法ではうまくいかないところが多いですが。少なくとも、RとLの区別に関する限りは、音との連動をもう少し意識しながら覚えることが大切ー。覚えるときに、RかLかを字の違いとしてだけではなく、音の違いとしても意識して覚えておくこと。こういうことを、来年度の授業では話したいと思います。


(→スウィートの音声学と綴り字改革論については、拙著『英語の改良を夢みたイギリス人たち』第6章「19世紀イギリス音声学の発展と綴り字改革論」や、『識字と読書―リテラシーの比較社会史』第10章「読み書き教育効率化と標準発音普及を目指して―19世紀後半イギリスの綴り字改革論」で書きました。)