『カティンの森』と独ソ不可侵条約

カティンの森』(アンジェイ・ワイダ監督、2007年、ポーランド映画

1939年独ソ不可侵条約締結後のポーランドクラクフ。ドイツ軍とソ連軍が侵攻し、ポーランド軍1万5千人が捕虜となり行方不明になった。その後のカティンの森での虐殺事件を描いた映画。捕虜となった将校たちと夫、兄、息子を待つ女性たちを描いた群像劇。ワイダ監督は、父親をこの虐殺で亡くしていて、 1950年代半ばにこの事件の真相を知って以来ずっと映画化を考えていたそうです。

戦争ドラマというよりも人間ドラマとして描かれていますが、説明はくどくなく、物語も感情も過剰でない。けれど、緊張の糸が、ラストまでずっとつながっています。見てよかった。

言語は、ポーランド語とロシア語とドイツ語。(見ているときは、ポ語=全然わからない、露=あいさつくらいはわかる、独=なんとなくわかる、で区別…)

カティンの森 (集英社文庫)

カティンの森 (集英社文庫)

ところで、映画冒頭に字幕で説明された独ソ不可侵条約は、個人的な思い入れのある条約です。20数年前、大学1回生の春、最初にゼミ発表をしたのが「独ソ不可侵条約」でした。西洋史学の富岡次郎先生の学部横断の少人数ゼミで、発表テーマは自由でした。そのときの自分が、なぜこのテーマを選んだのかは、覚えていません。ナチスドイツ関連で何かと思って調べていたのだと思います。

日本語の研究書を数冊読んでまとめるというような作業をしただけでしたが、受験勉強を終えて大学生になり、自分でテーマを設定して、本を読んで調べていくという勉強ができるようになったことが、とても嬉しかったこと。教養部の図書館ではなく、本部の附属図書館まで出かけていくことが誇らしかったこと。そういうことを思いだします。そういえば、『カティンの森』の映画パンフレットに「悲劇的事実の総括」を書いていらっしゃる川成洋先生のお名前を最初にうかがったのも、富岡先生の西洋史学の授業のなかでのことでした。