ジーン・シモンズと『ハウルの動く城』

イギリスの女優ジーン・シモンズが亡くなったことを、数日前に新聞で知りました。『ハムレット』(1948)でローレンス・オリヴィエの恋人役を演じたとか、『大いなる西部』(1958)ではグレゴリー・ペックと共演しているとか、そういう代表作をもつイギリスの女優さん。私が一番最近見たのは、英語版の『ハウルの動く城』(宮崎駿監督、2004年)で、この映画があったから訃報を見たときに、好きな映画に出ていたひととして気になったのでした。

ハウルの動く城 特別収録版 [DVD]

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英語版でジーン・シモンズが声をあてているのは、おばあちゃんになったソフィーの役です。若いソフィーはエミリー・モーティマー。オリジナル=日本語版では、倍賞千恵子が若いソフィーと年取ったソフィーの両方を演じていますが、吹き替えでは分かれているわけです。フランス語も、若いソフィーと年取ったソフィーを別のひとが担当しています。


英語版のハウル役は、クリスチャン・ベール(なのでそもそもDVDを見ることにしたー)。このハウルは、低音できざでナルシスでええかっこしいで、でも傷つきやすくて、そして気高い。実は、英語版を先に見たので、そのあと日本語版を見たときに、木村拓哉の演じるハウルが少年の面影を残した朗らかな声の王子様なのが、新鮮な驚きでした。こちらがオリジナルなんですよね。絵柄にも合ってるし好きだけど。でも、最初に刷り込まれたイメージって、大きいです…

DVD特典映像の英語吹き替え版ピート・ドクター監督インタビューによると、ハウルのようなキャラクターが、英語圏ではかっこいい男の一パターンとして存在しないので、この役は難しかった、とのこと。細くて金髪で女性的な"effeminate"男というのが、かっこいい男として存在しないんだそうで。そういうキャラクターと英語圏の観客の橋渡し役を、ハウルの声をあてたベールが担ったという話でした。なるほど、だから、声の印象が、英語のハウルと日本語のハウルでずいぶん違うのねー。