『イギリスの経済衰退と教育―1870-1990s 』

マイケル・サンダーソン著、安原義仁・藤井泰・福石賢一監訳『イギリスの経済衰退と教育―1870-1990s』を読み始めました。

イギリスの経済衰退と教育―1870‐1990s

イギリスの経済衰退と教育―1870‐1990s

目次
序章 / 第一章 識字能力と学校教育 / 第二章 技術教育に問題があったのか/ 第三章 通説への反論 / 第四章 エリートの教育1870 -1914年 / 第五章 失われた好機 1914年-1944年 / 第六章 戦後の衰退―裏切られたティーンエイジャーたち― / 第七章 高等教育とパブリック・スクール―特権と妥当性/ 終章 /監訳者あとがき

監訳者あとがきを読んで概要を理解したのち、最初から読み始めたところ、私自身の関心(つまり、19,20世紀の読み書き教育と綴り字改革運動→くわしくはこちら)に引き付けて、とても興味深い一節に出会いました。

著者の曽祖父は1880年代、ホーウィチの鉄道工場で真鍮鋳造師および冶金職人として働いていた。曽祖父はこの仕事で、様々なタイプの金属の作り方すなわち「製法(レシート)を記録するために識字能力が必要であった。きれいに字を書いたが、「二つかみ分」を"two handfuls"ではなく"tow hanfuls"としたり、「ブリタニア」[スズを主成分とした合金]のことを"Britannia"ではなく、"Brotannia"と綴ったりしていた。同様の例として、私のもう一つの家計の祖父は第一次世界前にブラックプールの日曜市に出すためにアスパラガスを栽培していた。祖父はアスパラガスのことをスパローグラスないしはスパラーグラスと呼び、"sparrowgrass"ないし"sparrergrass"と書いていた。単語の綴りが不正確で正しい英語が使えないことで、良い物を生産する人間の能力に問題があるとは言えない。生産物を表わす単語を綴ることよりも物を生産できる方がずっと重要である。曽祖父や祖父は何が重要であるかを正しく認識していた。(p.15)

アスパラガスの最初のアの音が抜けているところなどは、「アメリカン」を「メリケン」と聴いた近代日本人なども連想します。


安原先生のイギリス教育史の御本はいつも参照しています↓

イギリスの教育―歴史との対話

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イギリスの大学改革1809-1914 (高等教育シリーズ)

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