映画関連の新書
来年度担当することになっている新入生ゼミナールという科目の説明会が年末にありました。半年間で新書を3−4冊読むゼミで、読む本は配布され推薦図書一覧表から選んでもいいし、その他の新書でもいいそうです。一覧表を見ていると、人文系の新書があまり多くなかったので、言語や映画の関連で何か使える本がないかと考えていますー。
ゼミの課題図書に使えるかどうかは別にして、映画関連で私がおもしろく読んだ新書といえばー
- 作者: 加藤幹郎
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2006/07/01
- メディア: 新書
- 購入: 5人 クリック: 42回
- この商品を含むブログ (62件) を見る
第一部アメリカ編と第二部日本編に分かれています。第一部でおもしろかったのが、1905年〜1915年ごろの安普請小規模映画館が、それぞれエスニックグループに特化することによって、彼らの同化(アメリカ化)と異化(アイデンティティの保持)に、大きな影響力を持ったというところ。
また、1950年代に黄金期を迎えて、1970年代終わりには消えていったドライブイン・シアターは、ベビーシッター代を浮かせられるので、若い夫婦にとって福音であり、おむつやミルクが無料で供給されたとか。
さらに、最近の新たな流れとして、DVD視聴によって映画を私物化(!)するのは、映画史的には、振り出しに戻ることにもつながるかもしれない(大スクリーンができる前)という指摘もおもしろかった。
- 作者: 池ノ辺直子
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2002/05
- メディア: 新書
- クリック: 36回
- この商品を含むブログ (10件) を見る
映画の予告編制作の裏側。映画の宣伝・広告を担う以上、「つまらない映画でも面白いように見せる」ことが目的、と言い切ってあって、それが、うわー、そうか!というかんじでした。ビジネスとしての映画、という視点がおもしろかったです。たとえば『ニューヨークの恋人』は、36こま分の絵コンテつきで、その製作過程が説明してありました。コメディ色が強い映画だけれども、日本では、ラブストーリーメインで売っていこうということで、そういう予告編にしたそう。(ラブストーリーメインといえば、このあいだの『パブリック・エネミーズ』も露骨にラブストーリーメインで宣伝してましたが、予想通り、違いました…。)
- 作者: 太田直子
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2007/02/16
- メディア: 新書
- 購入: 1人 クリック: 56回
- この商品を含むブログ (87件) を見る
著者が、言語が英語以外の映画の字幕も、さまざま手がける、という話が、たいへん興味深かったです。ドイツ語、イタリア語、スペイン語、韓国語、中国語などはごく日常的に扱い、アラビア語、ヘブライ語、トルコ語、アイスランド語、スワヒリ語なども手がけたそうです。語学力については、専門家の力を借りることもできるし、英語からの重訳を用いることもよくあるので、大事なのは字幕自体を作る技術だという指摘は、驚きでしたが、とても示唆的でもありました。