映画関連の新書

来年度担当することになっている新入生ゼミナールという科目の説明会が年末にありました。半年間で新書を3−4冊読むゼミで、読む本は配布され推薦図書一覧表から選んでもいいし、その他の新書でもいいそうです。一覧表を見ていると、人文系の新書があまり多くなかったので、言語や映画の関連で何か使える本がないかと考えていますー。

ゼミの課題図書に使えるかどうかは別にして、映画関連で私がおもしろく読んだ新書といえばー

映画館と観客の文化史 (中公新書)

映画館と観客の文化史 (中公新書)

第一部アメリカ編と第二部日本編に分かれています。第一部でおもしろかったのが、1905年〜1915年ごろの安普請小規模映画館が、それぞれエスニックグループに特化することによって、彼らの同化(アメリカ化)と異化(アイデンティティの保持)に、大きな影響力を持ったというところ。

また、1950年代に黄金期を迎えて、1970年代終わりには消えていったドライブイン・シアターは、ベビーシッター代を浮かせられるので、若い夫婦にとって福音であり、おむつやミルクが無料で供給されたとか。

さらに、最近の新たな流れとして、DVD視聴によって映画を私物化(!)するのは、映画史的には、振り出しに戻ることにもつながるかもしれない(大スクリーンができる前)という指摘もおもしろかった。


映画は予告篇が面白い (光文社新書)

映画は予告篇が面白い (光文社新書)

映画の予告編制作の裏側。映画の宣伝・広告を担う以上、「つまらない映画でも面白いように見せる」ことが目的、と言い切ってあって、それが、うわー、そうか!というかんじでした。ビジネスとしての映画、という視点がおもしろかったです。たとえば『ニューヨークの恋人』は、36こま分の絵コンテつきで、その製作過程が説明してありました。コメディ色が強い映画だけれども、日本では、ラブストーリーメインで売っていこうということで、そういう予告編にしたそう。(ラブストーリーメインといえば、このあいだの『パブリック・エネミーズ』も露骨にラブストーリーメインで宣伝してましたが、予想通り、違いました…。)

字幕屋は銀幕の片隅で日本語が変だと叫ぶ (光文社新書)

字幕屋は銀幕の片隅で日本語が変だと叫ぶ (光文社新書)

著者は字幕翻訳家。エッセイ風の作りで、『コンタクト』『初恋のきた道』『ヒトラー 最期の12日間』『シュレック2』『エルミタージュ幻想』などの字幕を担当した人ならではの、おもしろい話が盛り込まれていました。

著者が、言語が英語以外の映画の字幕も、さまざま手がける、という話が、たいへん興味深かったです。ドイツ語、イタリア語、スペイン語、韓国語、中国語などはごく日常的に扱い、アラビア語ヘブライ語トルコ語アイスランド語スワヒリ語なども手がけたそうです。語学力については、専門家の力を借りることもできるし、英語からの重訳を用いることもよくあるので、大事なのは字幕自体を作る技術だという指摘は、驚きでしたが、とても示唆的でもありました。