『ウェールズの山』のウェールズ語

「英語学概論b」「言語文化論II」は、消滅する言語について。ウェールズ語の話をして、『ウェールズの山The Englishman Who Went Up a Hill But Came Down a Mountain (クリストファー・マンガー監督・脚本、1995年)を紹介しました。

ウェールズの山 [DVD]

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1917年ウェールズ南部の山の測量にきたイングランド測量士ヒュー・グラント)と「山」に誇りをもつ村人たち(コーム・ミーニー他)との交流を描いたコメディです。大事な村の「山」が、高さが足りなくて「丘」にされそうになり、村人はー、という話。

映画の言語としては英語。ナレーションは、ウェールズ南部の英語

ウェールズ語が出てくるのは、最初に測量士が村にたどりついたときに、宿屋の二階から顔を出したモーガン(コーム・ミーニー)が、ウェールズを話すところ。…ただ今回の授業では、このウェールズ語の台詞で、実際になんと言っているのか、調べられませんでした…(→次回この話をするときまでの私の宿題)

この台詞に対して、「誰か英語を話すひとはいませんか?」と測量士ヒュー・グラントイングランドの標準英語(RP)で返し、そのあとは、ずっと英語でのやりとりになります。モーガンが最初デフォルトでウェールズ語を使っているところなどを考えると、リアリズム的には、もう少しウェールズ語が聞かれる環境なのではないかと思われますがー。

劇中の英語のなかに見られるウェールズ語として、たとえば、村人の一人につけられたThomas twpという呼び名があります。Twp(トゥップ)はウェールズ語の「ばか」。『リーダーズ英和辞典』には、ウェールズ南部方言の英単語として載っています。

それから、大事な「山」が、高さが足りなくて「丘」と認定されれるということになって、慌てた村人たちが知恵を絞る場面で、集会所に掲げてある言葉 Plant Owain(オワインの子どもたち)もウェールズ語plantは「子どもたち」で、plentyn「子ども」の複数形。オワインは、1400年にウェールズ大公を宣言した英雄Owain Glyndwr (オワイン・グランドゥール)。

参考文献として使ったもの

毎日ウェールズ語を話そう

毎日ウェールズ語を話そう

→巻末の、19世紀末と20世紀末のウェールズ語話者分布地図

ケルトの水脈 (興亡の世界史)

ケルトの水脈 (興亡の世界史)

→「ケルト語文化圏諸地域」地図(p.19)や「現代ケルト語の変遷と現代ヨーロッパのおもな言語(印欧語)」概念図(p.148)

また、吉賀憲夫先生の「『ウェールズの山』とそのモデル」のページは、この映画のモデルとなった「ガースの丘」への登頂記録や、映画鑑賞のヒントが記されていて、必見です!