『歴史はもっとおもしろい』

『歴史はもっとおもしろい―歴史学入門12のアプローチ』福岡大学人文学部歴史学科編著 西日本新聞社 2009年

第1章「書くこと、読むこと、話すこと―言葉の背後にある生活を想像する」を執筆された松塚俊三先生に頂戴しました。ありがとうございました。

第1章では、18,19世紀イングランドスコットランド識字率リテラシについての研究を紹介しながら、論が進みます。

「これまで『文盲』として処理されてきた多くの民衆は「書くこと」はできなかったが、「読むこと」ができたという驚くべき事実」(p.15)、
「十八世紀以前の民衆にとって、読むことは家族や隣人あるいは小さな民衆学校の教師たちによって教えられる、いわば誰でも教えることができる技術であったのに対し、書き方は男の書き方教師(writing master)によって教えられる特殊な職業技術(カリグラフィー)だった」(p.16)、
「読むという行為は個人的なものではなく、読み書きできない大勢の者たちをも印刷物にしっかりとつなぎとめる確かな社会的な広がりをもっていたということになるでしょうか」(p.18)


松塚先生の『歴史のなかの教師―近代イギリスの国家と民衆文化』(山川出版社、2001年)は、拙著『英語の改良を夢みたイギリス人たち』を構想、執筆するなかで、何度も読み返した本です。昨年の私のゼミ(国際文化演習)では、内外学校協会のバラロード師範学校で訓練を受けて小学校教師になった綴り字改革論者アイザック・ピットマン(1813-97)の伝記を読んでいたのですが、『歴史のなかの教師』は、そのときのレポート課題図書のうちの一冊でもありました。そのエッセンスを、今回、あらためて読むことができました。

歴史のなかの教師―近代イギリスの国家と民衆文化

歴史のなかの教師―近代イギリスの国家と民衆文化