『近世ヨーロッパの言語と社会―印刷の発明からフランス革命まで』

『近世ヨーロッパの言語と社会―印刷の発明からフランス革命まで』
ピーター・バーク著、原聖訳、岩波書店、2009年

「識字と読書」プロジェクト関連で教えてもらった本を読了。オリジナルは2004年出版。

目次
序章 共同体と諸地域
第一章 「話を聞けば、どんな人物かが判明する」―近世における言語の発見
第二章 ラテン語 言語共同体への模索
第三章 競い合う俗語群
第四章 標準語化する諸言語
第五章 混ざり合う諸言語
第六章 言語の純化
終章 言語と民族


「言語の階層性は社会秩序の反映であり、これを支えるものである」(38)
ラテン語とは共同体を模索し続ける言語だった」(57)
「『標準語化』とは、一様化する過程だけでなく、規則に従うことをも意味する、あいまいな表現である」(121)

文法、綴り字、発音の標準化の話など、どうしても自分の教育・研究では英語のことだけを考えて論を立ててしまいますが、近世ヨーロッパ言語社会史という大きな枠組みまで視野に入れることが大事なのだと改めて痛感しました。なんらかの形で授業に使いたい本だと思いました。

「訳者としても、著者の意向を受け継ぎ、日本の読者に対して、英語を経由した地名、言語名にあまりに慣れ親しんでしまっている現状に警鐘をならすため、あえて、あまりこなれているとは言い難い、英語から遠い現地音、自称による地名等を採用した」(訳者あとがき、252)という翻訳方針が、それ自体が、多言語主義の実践となっていることに感銘を受けました。

近世ヨーロッパの言語と社会―印刷の発明からフランス革命まで

近世ヨーロッパの言語と社会―印刷の発明からフランス革命まで