入浴シーンに注目したい『ピグマリオン』

ピグマリオンPygmalion 1938年 アンソニー・アスキスレスリー・ハワード監督

ピグマリオン [DVD]

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バーナード・ショーの戯曲『ピグマリオン』(1916)の映画化。花売り娘のコックニー訛りを矯正する音声学者の話です。

授業「英語学概論b」「言語文化論II」で、社会方言social dialectの話をしたあと、紹介しました。

ミュージカル映画版『マイ・フェア・レディ』(1964)があまりにも有名ですが、こちらのストレートプレイ版『ピグマリオン』もとてもいい映画で、私は大好きです。音声学者ヘンリー・ヒギンズ教授(レスリー・ハワード)と花売り娘イライザ・ドゥーリトル(ウェンディ・ヒラー)の関係が、『マイ・フェア・レディ』のレックス・ハリソンとオードリー・ヘップバーンの関係に比べると、ずいぶん生々しいというか、ある種の性的な緊張感が感じられます。・・といっても1938年の映画ですから、特にきわどい場面が出てくるわけではありませんが。


ヒギンズがイライザの訛りや振る舞いを、舌舐めずりするように嬉々としてこき下ろすところなど。
She's so deliciously low, so horribly dirty(ぞくっとするほど下品で、おそろしく汚い)

これがただ嫌味な鼻もちならない男になっていないところが、このあと『風と共に去りぬ』(1939)で優男アシュレーを演じるレスリー・ハワードの魅力のなせるわざなんでしょうー

イライザが、ヒギンズ家の家政婦に入浴を勧められたときに、いやだいやだと全身で抵抗する場面が生活習慣の違いを雄弁に表していて、ここも注目。