『駅伝流―早稲田はいかに人材を育て最強の組織となったか』

『駅伝流―早稲田はいかに人材を育て最強の組織となったか?』渡辺康幸、文春新書。これはおもしろい本でした。ランニングからの興味で手にとったけど、思いのほか、大学教員として、今どきの学生さん(とその親御さん)とどう付き合い、どうやって伸びてもらうか、についての示唆に富む本でした。

たとえば、母親が箱根駅伝の選手選抜やチーム運営に口をはさんでくるケースが増えたこと、とか。高校生をスカウトする際に、有力高校生間の情報収集能力、情報網(パソコン、携帯)が非常に影響力大きいとか。

今の大学生は90分の授業さえ長く感じるのだから、とにかくミーティングは5分か10分の短さで、とか。今の学生は舌が肥えているので合宿所の食事を改善した、とか。一方で、一軍、二軍の待遇差をつけてモチベアップにつなげるとか。大学教員なら、ああそうか、そうだよな、と思うことが多い。

自分ごとにひきつけると、今日は京都府立大学文学部欧米言語文化学科の卒業論文の提出日でした。私は二人の卒論を指導していました。その指導については、迷うところもありました。自分の言葉がきつすぎると反省したことも。また、学生さん同士の情報網、情報交換の密度に驚いたりしました。忙しい学生さんのくらしのなかで卒論の占める位置に戸惑ったりもしました。そして、いろいろあるなかで、結果(=一定レベルの卒論提出)をどうやって出してもらうかー、が教師としての課題なのです。

『駅伝流』にもどると、早稲田の駅伝なんて、エリート中のエリートの話なんだけど、でも、一方で、今どきの大学生にどう向き合い、どう接して、伸びてもらうか、という話しとして、読み応えがあったのでした。