『わたしを離さないで』

『わたしを離さないで』 (Never let me go) マーク・ロマネク監督、2010年

(恥ずかしながらカズオ・イシグロの原作は未読で、映画を見て、読もう、と思っているところですー。以下、ややネタバレですー)

生命倫理に関わるSFですが、舞台は寄宿制の学校。学校内で課せられる規律、厳しい校長(シャーロット・ランプリングが怖いんです。射るような眼差しが)。この寄宿制学校の様子が、なんというか、まるで『ジェイン・エア』のよう。

19世紀小説にあるような、寄宿制学校の閉鎖空間をひとつの世界として物語を描く歴史的なセッティングを借りて、極めて今日的な臓器移植、クローン技術にかかわる物語を描いているわけです。

このあたりの、伝統的な物語枠の使い方--イギリスお得意の文芸ものとみまがうような映像—がうまいなあと思いました。テーマとして重いので映画としての好き嫌いがあるかと思いますが、私は、よく似たテーマを扱った映画『私のなかのあなた』の、ホームドラマチックな味付けがちょっと苦手だったので、これくらい抽象化された表象のほうが主題が伝わるし、生命倫理について考える契機になるように思えました。

Never Let Me Go (Vintage International)

Never Let Me Go (Vintage International)

わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)

わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)

主人公が友人を、TVドラマのことばづかいまねるなんて軽薄、となじる場面でやり玉にあがったのが"so not right" 字幕は「超ヒドい」だったかー。