『レオニー』
『レオニー』(Leonie、2010年、松井久子監督、脚本、製作)
彫刻家イサム・ノグチ(1904-1988)の母、レオニー・ギルモア(1873-1933)の生涯を、ドウス昌代『イサム・ノグチ』にインスパイアされ、伝記的事実を再構成して描いた映画。イサム・ノグチの父で詩人の野口米次郎を中村獅童。主人公レオニーは、イギリスの大竹しのぶ(と思う^^)エミリー・モーティマー。 好きな女優さんなんですが、ここでもまあ、ほんと上手でした。
冒頭、1890年代にペンシルベニアのブリマーカレッジで学ぶレオニーは、美術史の講義で教授をやりこめ、完全に浮いてしまう。そのあと教室を去る彼女を追いかけてきた友人キャサリンとのやりとり。 "You'll find it much easier to simply disapprove. Don't bore me by being ordinary."と言い放つレオニー。
よく選ばれた台詞に、触れたらこちらがけがをしそうなくらい張り詰めた、潔癖で優秀な女子学生レオニー。この場面でぼろぼろ泣いてしまいました。
このときにずけずけ言われた友人キャサリンが、何年ものちに、男との関係が原因で窮地に立ったレオニーに"Don't you bore me, Leonie Gilmour. Don't you dare!"(がっかりさせないでよ!)という場面もよかった。
このほかにも女同士の絆、やりとりが描かれた場面が感動的な、女度の高い映画でした。(性愛の描き方も含めて)。
男性陣は、ヨネ(野口米次郎)の魅力がちょっとわかりにくいのですー。でも、まあ、ダメ男として描かれているのでそれでいいんですが。 途中、ヨネのパトロン?男性の台詞のIに「あたし」があてられていて、二人の関係をあらわしているようでした(字幕は戸田奈津子)
あと、映像的に、はっと息をのむような美しいショットが挟まれるのが印象的でした。撮影監督、永田鉄男。日本的な美。たとえば屋根瓦のショット。座敷から見る庭の緑と紅葉。石畳の路地を幾度もまがったあとに現れる家の灯り。
レオニーの芸術的自己実現が、男(夫であれ息子であれ)に託する形でなく、自身のものとしてなされていたならばー、と時代の限界を思わずにはいられません。そうして、最後までみて、あらためて冒頭の美術史の場面のやりとりの意味が、わかるのでした。
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