Educating Rita

Educating Rita という芝居を8月にロンドンのTrafalgar Studioで見ました。Willy Russell脚本 Glen Walford演出。

1980年のロンドンの舞台の再演。初演時はジュリー・ウォルターズがリタ役を演じていて、そのあとで作られた映画版ではジュリーが残り、教授役をマイケル・ケインが演じています。私はこの映画を見ていたのと、今回、劇評がよかったので見に行きました。

1980年のリヴァプールが舞台。アルコール依存症の初老の英文学教授（演じるのはティム・ピゴット・スミス）と、オープンユニヴァーシティ（個人指導型の生涯教育コース）の生徒としてやってきたリタ（ローラ・ドスサントス）との交流。リタは、美容師として働いている。夫には、さっさと子供を作ろうといわれているが、子どもを持つには早い、今の自分が好きになれない、自分を向上させたいと思い、思い迷った末、このコース受講を決めている。 というあらすじ。

小さいころから、ハローやイートンのような学校、学問にあこがれていたが、労働者階級のライフコースから出られず、文学についてではなく、ファッションや男の話について話しながら大人になってしまった、というような話。

でも、自分を変えたいのだ、という話。

物語としては、第一幕が、リタと教授の異文化衝突。ポニーテールに、デニム地のカジュアルなジャケット（短いスカート）をはいて、けばけばしいピンクのシャツを着てあらわれるリタ。

リタは強いリヴァプール訛りの英語。funnyをフニー、moneyをムニーというような、アをウにする発音。（といっても、私が聞いてわかるのだから、いわゆるステージダイアレクトで、この母音がシステマティックに変化している以外は、イントネーションが特徴的なくらい）。

小説を読んでレポートを書かせるが、リタが書いたものといえば、「ラジオドラマに向いている」の一行だけ。それがだんだん、教授が、リタに感化されるようにな。リタは、試験に通るような「まともな」レポートを書きたいと思っているが、教授は、リタの書くものは試験には通らないが、リタらしさが出ていてとてもいい、それをつぶしてしまうのはもったいない、と思う。

教授がリタ夫婦を家のホームパーティ招待する。（離婚後、別の女性と同居中）。結局現れない。あとで教授が聞くと、夫に反対されたという。ひとりでいこうとしたが「何を着て行ったらいいのかわからなかった。何を話したらいいのか、と考えているうちにバスをのりすごした。手土産にワインを買ったが、きっと間違った種類のワインを選んだと思うと、家の前までいったけれど、入れなかった。」などという。

結局子どもをほしがる夫とは離婚することにしたと家を出て、自活するようになるリタ。

第二幕では、リタのファッションがローラアシュレイ風のシックなもの（アースカラー系。ロングスカート。カーディガン）にかわっている。髪もポニーテールから、長くおろしている。

リタは、ほかの学生とも親しくなり、物おじせずに大学生たちと話すようになる。タバコも止める。英語も標準発音になる。（教授に指摘されてまた戻す）
教授はリタの新しい友達関係に嫉妬する。 教授は、やはり酒が絶てない。そのせいで、オーストラリアの姉妹校に飛ばされることになる。

やがて、リタのオープンユニヴァーシティのコースが終わる。「あなたはいい教師だ」と力づけられる。

感想。
小さな劇場で「スタジオ」というだけあって、実験的な感じのつくりの小さな劇場。近鉄小劇場を思い出した。客席が三方から舞台を囲んでいる。

おもしろくなくはない。 劇評がいいのもわかる。 二人芝居で、二人の掛け合いが勢いがあっておもしろい。

英文学教授なので、「ハワーズエンド」「マクベス」がリタの視点から語られるのもおもしろい。

ただモチーフが、あまりにも、階級社会を意識したもので、なんか、ステレオタイプ過ぎて、むずむずしました。ブルデューやバーンステインの描くような階級の文化の違いをそのままべたっと役に移したような役と台詞。 ピグマリオンモチーフというのは、もっと毒がないとつまらないのではないか。リタが、なぜ、階級上昇をしたいのか、それが自明なものとして描かれているのがよくわからない。

たとえばディナーに来なかった件で、教授はリタをfunny, delightfulな女性として、自分のミドルクラスの友達に紹介したかった、というが、リタは自分は、「陽気な面白い子」ではなくて、eduatedなintellectualな女性になりたいのだ、という。 30年前とは時代が変わったからなのかもしれないけれどリタの抱く「高等教育を受けたミドルクラスへの憧れ」がうまく相対化できていないのではないか。

映画はこちら↓

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