『新しい人生のはじめ方』

(学休期間中はあまりブログ更新できなかったのですが、後期が始まったので心を入れ替えて^^ 授業の話のあいまに、8月、9月に見た映画(DVD)や舞台について書きます。これは8月末に見たDVD)

『新しい人生のはじめ方』
Last Chance Harvey
ジョエル・ホプキンス監督
2008年

邦題のやばいかんじ(だってあのジャック・ニコルソンモーガン・フリーマンのあまりにも凡庸で見に行ったことを後悔した映画を思い出させるし)や、 また、キャスト―エマトンプソンとダスティンホフマン―のいかにも手練れペアが醸し出す、見る前からこってりした演技がすべて見通せるような既視感から、 あまり期待せずにDVD見始めたけれど、おもしろかった!

脚本の細部が気が利いているのと、エマもダスティンも、濃くやりすぎてないかんじがよかった。

エマ・トンプソンは、1992年にケンブリッジのアートシネマで「ハワーズエンド」を見たときに一緒に見に行ったフランス人の友達に「エマ・トンプソンって美人じゃない(not pretty)けどいいよねえ」といったら、美人よー、なにいってんの、と猛烈反論された記憶がある。

まあ、日本人の私がエマを美人じゃないとか言っちゃうことへのフランス人的反応だったのかもしれないなーと今は思うけど。 ともあれ、あの頃(「から騒ぎ」「ピーターズ・フレンズ」「愛と死のはざまで」「ヘンリー五世」のころ)も今も、やっぱり、エマ・トンプソンって、いわゆる美人女優ではないと思うー。

むしろ、知とか理とかが勝ってしまうタイプだと思う。そこがいいってことを、くだんの友人にはいいたかったんだけど。まあ、それにしても、こういうタイプの女優さんが、40代から50代へとどう歳を重ねていくのか、というのは気になる。目が離せない。

この映画では、40代でロンドンで安定した仕事をしているもののプライベートでは、ちょっと神経症的な母親からの頻繁な電話に悩まされているような、そういう独身女性を演じている。

その地味で平穏な(でもときに泣きたくなるようなつまらない)生活に、ひょんなことから、ホフマン演じるアメリカ人旅行者ハーヴェイが飛び込んでくる、という話。

ハーヴェイはロンドンで仕事している娘の結婚式に呼ばれてアメリカからやってきたのだが、彼はすでに離婚していて、酒癖の悪さから落ちぶれた生活をしており、一方元妻は再婚しているため、娘は継父を実父のようにして結婚式をしようとするー、というような状況。

いいなあ、と思ったのは、脚本の台詞の細部。ちょっと引用したくなるようなしゃれた台詞がある。

"You work for Scott? " "We work WITH Scott." 
字幕は「スコットは君たちの上司?同僚です」
前置詞ひとつでうまい。

"You look well." "You look weller." 娘の結婚式前に知人との再会にナーバスになっている父(ダスティン・ホフマン)がユーモアを交えようとweller.

"Do you live with her?"
"Not with, NEAR." とか。

"We have lunch together."
"Not together, next to each other."とか。そういう対話が多い。

エマ・トンプソン"I think I'm more comfortable with being disappointed."(あきらめて生きるほうが楽なの) とか。

それにしても、サウスバンクのフォトジェニックなこと。というか、サウスバンクにロケーションをおいて、テムズ川と対岸セントポールなどを望む感じ。 『クローサー』、クライヴ・オーウェンジュリア・ロバーツを口説いたのもサウスバンクだ。十日前にはあそこにいたんだよねーと思いながら見る。

新しい人生のはじめかた [DVD]

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