『ローラーガールズ・ダイアリー』

ローラーガールズ・ダイアリー』(ドリュー・バリモア監督、Whip it, 2009年)を見ました。

アメリカ南部テキサス州オースティン郊外の小さな町に暮らす17歳のブリス(エレン・ペイジ)が、ローラーゲームを始め、夢中になることで、自分がやりたいことを見出していく話。ローラースケートを履いて、小さなトラックを周回し相手チームを追い抜くことで得点するチーム競技で、少々の接触は許されるワイルドなゲームで、1960年代に全米で流行ったものが、近年テキサスでブーム再燃しているそうです。ローラーゲームの話が主軸で、娘を町のミスコンで優勝させることを生きがいにしている母(マーシャ・ゲイ・ハーデン)とのやりとり、バンド青年との恋、なども描かれています。

スポーツ映画のリアリティは、スポーツシーンの肉体性がどこまで真に迫って感じられるかにかかっているというのは、『インビクタス』のラグビーシーンでも思いましたが、『ローラーガールズ・ダイアリー』も、トラックをぐるぐる回る女の子たちのスピードと競り合い、それから、身体的なぶつかりあい、痛みが、リアルに感じられる映画で、おもしろかったです。

17歳の肖像』と重なるところのある映画でした(→日記はこちら)。どちらも、高校生の女の子が、親に守られた世界を離れ、外の世界への一歩を踏み出して、自分が誰であるのかを考えて行く成長物語。ただ、大人の世界に導いてくれるのが、(17歳の肖像のような)困った大人の男じゃなくて、ローラーゲームのたくましい女たちであるところが(監督のドリュー・バリモアもその一員として出演)、なんか、この映画の後味の良さ、女の子賛歌みたいなところに結びついてくるのね、と思ったりしました。

ゼミの前期打ち上げをかねて受講生を誘って見に行ったのですが、学生さんは主人公目線で見てるんだろうなーと思いつつ、私は脱ぎ捨てていかれる古い服のような母親に感情移入して見てしまいました。娘の靴を買いに、二人でオースティンに出かけていっていったときに、母は若い店員のふざけた応対に、馬鹿にされたと感じて、せっかく娘が気に入った靴があったのに買わずに帰ろうとします。娘は、Don't be embarrassed.(恥をかかされたと思わないで)というのですが、母はおさまらない。家で待っている父に電話して、ドラッグをやっているような店で買い物はできないと娘に言ってやって、と言っています。この一連のやりとりが、ああ、わかるなあ、と思いました。母にとっては、娘の靴を買いにオースティンまで出てくるというのは大事なイベントなのです。なのでその物語を壊してしまうような店員の対応が我慢できない。物語の修復のために、父親を電話で呼び出して娘と話させようとするのだけれど、そんなことは滑稽に見えるー。また、母が郵便配達のカートを引いて黙々と仕事している場面も印象的です。

Whip It

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