『原稿用紙10枚を書く力』

 書き物仕事の気分を盛り上げるために『原稿用紙10枚を書く力』(齋藤孝著)を再読。意欲的・野心的に書こうという勢いが伝わってくるので、自己啓発本のような効用を求めて読みました。

原稿用紙10枚を書く力 (だいわ文庫)

原稿用紙10枚を書く力 (だいわ文庫)

 以前読んだときには特に心に残らなかったのですが、今回「書くことは走ることに似ている」という比喩が、リアルな実感としておもしろかったです。

 話すことが歩くことだとすれば、書くことは走ることに似ている。いきなりでも長い距離を歩くことができるように、特別な訓練をしなくても、長い時間話すことはできる。
 しかし、長い距離を走るとなると、絶対にトレーニングが必要になる。慣れていない人がいきなり十キロを走るのは、まず無理だ。それなりのトレーニングをして徐々に距離を延ばしていかないと、長い距離は走れない。書くこともそれと同じなのだ。
 私の感覚では四百字詰め原稿用紙一枚が一キロにあたる。十キロをいきなり走れと言われたら、ほとんどの人が尻込みするだろうし、まず走れない。しかし、トレーニングをこなせば、十キロ程度ならだれでも走れるようになる。
 この十キロ走るという経験と、走れたという自信がもっとも大切なのだ。(『原稿用紙10枚を書く力』pp.13-4)

 原稿用紙42枚書く方が、フルマラソン走るより、どう考えても簡単だと思うけれど。でも、読者としては、こういうわかりやすい比喩、力強い言い切りが、心地よい。 
 構築力や文体を身につける方法の説明なども、わかりやすく、学生さんにお勧めの一冊です。