『モナリザ・スマイル』の授業風景

授業で立ち往生する大学教師の描き方が、なんともうまいなあと思った映画。『モナリザ・スマイル』(Mona Lisa Smile、マーク・ニューウェル監督、2003年) 

1953年、ニューイングランド名門女子大学ウェルズリー・カレッジがに赴任してきた美術史の講師キャサリン・ワトソン(ジュリア・ロバーツ)は、恵まれた家に生まれ育ち申し分ない高等教育を受けながらも、在学中に結婚し、よき妻よき母としての生き方を理想と考える学生たち(キルステン・ダンストマギー・ギレンホールほか)の生き方に、なんとか影響を与えようとするー、というストーリー。進歩的な教師と誇り高く多感な学生との交流を、個別エピソードの積み重ねで描いています。

冒頭近くの、キャサリンが最初の講義をして、スノッブな学生たちにこてんぱんにやられるシーンは、鳥肌が立つほどぞくぞくしました(>マゾ?)。「教科書に書いてあることしかあなたが教えられないのなら、私たちは自習しますから」と学生に言い放たれる屈辱、そして、逆説的な喜び。州立大学育ちのキャサリンには、想像のつかない、スノッブな学生たちの意地悪でかつ真剣な挑戦。

初回に教科書通りの美術史を教えようとして、完璧な予習をした受講生たちにやりこめられたキャサリンは、次の授業ではスーティンの肉の絵を見せます。
(↓ここは、初回授業の立ち往生を挽回するための二回目の授業シーン。)

 教師:Come on, ladies. There's no wrong answer. さあ、どう思う。正解なんてないのよ。
 学生1:No. It's not good. In fact, I couldn't even call it art. It's grotesque. よくないと思う。芸術とは言えない。グロテスクです。
 学生2:Is there a rule against art being grotesque? 芸術がグロテスクではいけないという規則でも?
 学生3:I think there's somthing agressive about it.  何か攻撃的なものを感じます。


このあたりのテンポが非常にいい。

…ただ、最初のそうした知的バトルからくる緊張感が、物語の進展とともになくなってしまうのは、残念でした。結局のところ、学生たちは、在学中に結婚していくことが一番の栄誉と思っているので、価値観が結婚・恋愛重視に変わっていきます。そして、そうなってしまうと脚本が急にだれていくように思いました。キャサリンも、You don't make it easy. You're so perfect. It's impossible to be honest with you. なんてことをいう男にひっかかるしー。


ともあれ、英語がわかりやすくて、使えそうな表現もたくさんあって、英語教材に最適というかんじ。