『君のためなら千回でも』

連休中、家の近くの公園で凧上げをしている親子連れの姿をよく見かけました。私も昨年はよく凧上げをしたのですが、二つあった子どもの凧が二つともなくなってしまったので―ひとつは糸が切れ、もうひとつは手を離してしまって―今年は上げる凧がありません…。

青空に上がる凧といえば思いだすのが『君のためなら千回でも』(The Kite Runnerマーク・フォスター監督、2007年)。

映画前半は、1970年代、アフガニスタン首都カブールが舞台。厳格な父のもとで、使用人の子供ハッサンを親友として育っていたアミールが主人公。二人は凧揚げ大会で優勝し、大きな名誉を得ますが、ハッサンが少数民族ハザーラ人であることをよく思わない町の子供たちに目をつけられることになります…。後半は亡命先のアメリカで大人になったアミールがハッサンのために、2000年、タリバン政権下のアフガニスタンに帰ってくる話。

原題にあるkite runnerは「凧追い」。この凧上げ大会は、高さを競うのではなくて、相手の凧に襲い掛かって糸を切り、一番数多くの凧の糸を切ったひとが勝つ、というものです。糸が切れた凧が飛んでいった方向を見定めて走っていって取ってこなければならないのです。主人公はアミールですが、タイトルが指しているのは、ハッサン。

英語以外に、アフガニスタン公用語のひとつであるダリー語もかなり使われています。映画を見てから翻訳を読んだ原作小説では、識字の意味なども書きこまれていて、おもしろかった。

君のためなら千回でも(上巻) (ハヤカワepi文庫)

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